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「インテグラル・ヨーガ」 [書棚の中の1冊]


インテグラル・ヨーガ (パタンジャリのヨーガ・スートラ)

インテグラル・ヨーガ (パタンジャリのヨーガ・スートラ)

  • 作者: スワミ・サッチダーナンダ
  • 出版社/メーカー: めるくまーる
  • 発売日: 1993/12
  • メディア: 単行本

私は若い頃から「心」とか「意識」というテーマについて関心を持っていました。そういう人間がヨーガ哲学に目を向けるのも当然だったのでしょう。この「インテグラル・ヨーガ」はヨーガの重要な経典である「ヨーガ・スートラ」をわかりやすく解説した本です。

ヨーガというと一般には特殊な体操(アーサナという)をイメージするようですが、それはハタ・ヨーガと呼ばれるもの。この本が対象としているのは瞑想を中心にしたヨーガであるラージャ・ヨーガです。ですから、体操の紹介本ではありません。

ラージャ・ヨーガ、そして究極的は全てのヨーガの目標は「心の作用を止滅すること」とされています。それでは、心とは何か、なぜ心の働きを止める必要があるのか、その方法は・・・、この解説書に書かれているのはこういった内容です。

私自身は別の記事で書いているように、現在は「想念観察+ホ・オポノポノ」を日常で実践しているのですが、そこに至る前段階として、若い頃のヨーガを通じた「心」についての理解のようなものがありました。それが、全ての人に必要なこととは思いません。あくまで個人的な探求のプロセスに過ぎません。それでも、この本自体はとても魅力的な本であり、一読の価値はあると思います。

この本は聖書のようなもので、「序」には「一般の小説のように、一度目を通しただけで投げ捨ててしまうような本ではない。また、大量の議論や哲学によって心を満たす学術書でもない。これは実用的なハンドブックなのだ。あなたはそれを手にするたびに、成長のための新しい何かを必ず吸収することができる。ゆっくりと、より深く理解することを試みよう。そしてわれわれの理解がいかに貧しいか、実践に取り組もう。ヨーガにおいては、実践は必須の要素である」と書かれています。そういう本なのです。

原典の「ヨーガ・スートラ」はとても簡潔で、素っ気ない経典なのですが、この「インテグラル・ヨーガ」は著者サッチダーナンダ氏自身のヨーガの修習と指導経験に基づいた実践的な内容となっています。

そのような内容の中から、「なるほどね」という感じで私の心に特に強く残っている1節を簡単にご紹介します。「ヨーガなどやるつもりはないという人にも、少なくともこのスートラだけは覚えておくよう勧めたい。」と著者が紹介している内容です。
他の幸福を喜び(慈)不幸を憐れみ(悲)、他の有徳を欣び(喜)不徳を捨てる(捨)態度を培うことによって、心は乱れなき清澄を保つ。(スートラ 1章33節)

この節に対して身近な例をもとにわかりやすい解説が書かれているのですが、長くなるので全てを紹介できないのが残念です。私なりに簡単にまとめると次のようになります。

世の中には4種類の人しかいない。幸福な人、不幸な人、有徳の人、不徳の人である。どんな人でも瞬間瞬間で見れば、この4タイプのどれかにあてはまる。これらに人々に出会った時、どのような態度を取れば自分自身の平静を保つことができるだろうか。

幸福な人に出会ったら → (妬むのではなく)その幸せを共に喜び、その人を友としなさい。
不幸な人に出会ったら → (その人のカルマの結果だなどと言わずに)憐れみの心をもちなさい。
有徳の人に出会ったら → (羨むのではなく)その徳を讃え、手本として見習いなさい。
不徳の人に出会ったら → (忠告するのではなく)無関心でいなさい。

()内は思わず取ってしまいそうな態度ですね。そうではなく、慈(友愛)・悲(憐憫)・喜(欣喜)・捨(捨離)の4つのキーを用いる、「言うは易く行なうは難し」かもしれませんが、そういう態度で相手に接することで、心の平静を保つことができるということです。この解説を読んだとき、何と鋭い洞察であろうかと感心したものです。

このような実践的な内容がこの書物にはたくさん盛り込まれています。ただし、後半になると高度な瞑想の解説となり、自分の体験が伴わないので理解が難しい部分もあります。

私の場合、この本に書かれている内容の全てを実践できているとは言い難く、「なるほどそういうものかもしれない」のレベルに留まっている部分の方が多いです(特に後半の内容)。それでも、「心の中に種だけでも植え付けておく」という意味で価値があるのではと思います。この書物に若い頃に出会えたことは幸運でした。
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