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「新インナーゴルフ」 [書棚の中の1冊]


新 インナーゴルフ

新 インナーゴルフ

  • 作者: ティモシー ガルウェイ
  • 出版社/メーカー: 日刊スポーツ出版社
  • 発売日: 2002/03
  • メディア: 単行本

私のゴルフは現在練習場オンリーでコースには出ていません。ですので趣味とも言えないようなものなのですが、その私がなぜこの本を紹介するのか。もう少し先をお読みください。

私の父はゴルフ好きで、彼が生きていた頃は年に何回か一緒に回っていました。その頃から私自身は「ドライバーの壁」を感じていて、スコアは120前後をウロウロするばかりで、あまり面白いと思えなかったのです。アイアンとフェアウェイ・ウッドはいい感じなのに、どうしもドライバー・ショットが安定せず、結果スコアがまとまらないということです。

もともと研究熱心なタイプでいろいろ試行錯誤を繰り返しましたが、この壁だけはどうしてもクリアできません。ちなみにゴルフは父から若干の手ほどきを受けた以外は独学です。

そのようなわけで父が亡くなってからは私もゴルフから離れていました。数年後、ティーチング・プロの経験もあったという飲み屋のマスターと知り合って、基礎から教えてくれるという話になったのです。レッスン料は無料の代わりに、レッスン終了後その飲み屋に行くというのが暗黙の約束で。

「ドライバーの壁」は自分にとって悔しい思い出でしたし、きっちりと教わればこの壁はクリアできるのだろうという期待がありました。「自分に何が欠けていたのか」「何に気がつかなかったのか」、それを彼がどう教えてくれるのか、何を指摘してくれるのかという知的な関心が強かったです。

幸いなことに彼は理論肌の人で、ゴルフスイングの「あるべき姿」を理論的に教えてくれました。そのことは独学で何となくクラブを振っていた私にとっては「戻るべき基礎・チェックすべきポイント」が明確になったという意味でとても有益なレッスンでした。

それでも、残念ながら「ドライバーの壁」だけはどうしてもクリアできないのです。ドライバーと他のクラブで何が違うのか、よくわかりません。

さて、前置きが長くなってしまったのですが、ここで「インナーゴルフ」の登場です。

この本はゴルフの上達法について書かれたレッスン書ですが、ポイントは「自分の内面の感覚・身体が伝えてくれるメッセージに耳を傾けなさい」ということです。この点がよくあるレッスン書とは違うユニークなところです。完全に身体の判断に任せる練習として、目をつぶってスイングするという練習も紹介されていたりします。

インナーゴルフの背景にあるのは「インナー・ゲーム」という考え方です。この考え方ではセルフ1とセルフ2という二人の自分を仮定します。
セルフ1:「スイングはこうするものだ」という指示を出す自分。コーチのようなものです。
セルフ2:実際にスイングを行う自分。プレイヤーです。

著者の言葉ではありませんが、セルフ1は広く捉えれば「考える自分」「顕在意識」、セルフ2は「行動する自分」「潜在意識」と言えるでしょう。

ゴルフで言えば、セルフ1は「スタンスは肩幅ぐらいの広さ、背骨の軸をまっすぐ立てて、肩と腕の力は抜いて、バンカーには入れないように気をつけて…」とブツブツ独り言を言っている、ではなくて、一生懸命指示を出している自分ですね。そして、セルフ2はセルフ1の指示を忠実に守ろうと努力してスイングをする自分です。しかし、セルフ1の指示が細かければ細かいほどセルフ2は緊張してぎこちない動作になってしまうのです。

これに似たことはゴルフでなくても、他のスポーツや習い事でもよくある話ではないでしょうか。著者のアドバイスは(極端に言えば)セルフ1を無視して、セルフ2に全てを委ねてみなさいということなのです。「自分の体の声に耳を傾ける」、こういう感覚が私は好きです。「身体知」の世界です。

それで冒頭の話の続きです。

今までの理屈は全て忘れて、ひたすら自分の体に「どういう風にクラブを振ってみたいですか」と問いかける感じでスイングを見直してみました。そうすると確かに体が「ここはこうしましょう」という答えを返してきてくれるのです。決して怪しい話でも神秘の世界でもなく、自分の体の声に素直に耳を傾け、信頼するというだけです。

その答えの中には「ここまで脱力してクラブを握るのですか??」というような、私自身というか、セルフ1には理解不能なものもあったりします。セルフ1は「そんなに脱力したらクラブの軌道が安定しないではないか」と反論しそうです。自分の中の「分裂感」が不思議であり、楽しくもあります。

そして、まだ完全に安定したとは言えませんが、ドライバーの壁はクリアできたのです。あくまで練習場での話しに過ぎませんが、「これが私のドライバー・ショットだろうか」と自分を疑うほどの感激でした。まあそれまでがひど過ぎたのですが。

後はこれを自分なりの感覚・気付きとして安定した動作になるようにする練習が必要ですが、ここはセルフ1の得意分野かもしれません。

この「インナー・ゲーム」のシリーズは他にスキーやテニス、そして音楽もあります。音楽の本は既に購入済ですが、以前はサラッと読んで終わりにしていました。このブログで書いている「体験記:音のレッスン」の考察がもう少し進んだら、改めて読み直すつもりです。新鮮な気持ちで読める気がしており、今から楽しみです。

体の感覚を信じるところから豊かな世界が広がる、そんな体験のご紹介でした。


タグ:身体知
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コメント 4

まりうす


身体の声に耳を傾ける…とても大切なことですね(^-^)

本当に…
身体はビックリするほど叡智に満ちていて、何でも知ってるんだなって感じます

体験したこと、学んだことを、自分の表面意識は忘れていても、身体はちゃんと覚えていますしね♪

by まりうす (2012-04-07 17:14) 

まいな

まりうすさん、コメントありがとうございます

「身体は叡智に満ちている」、本当にそうですよね。体の感覚に自分を委ねてみる、たまたまゴルフの例で書いてみましたが、普段の生活全般において当たり前の感覚にしていきたいです。

長い間、合気道をやっていたので、「身体」をテーマにすると話が止まらなくなってしまう私です。
by まいな (2012-04-08 13:08) 

Zacky

とても興味深く読ませていただきました。

日ごろ、自分が考えているテーマに関連しているので
なおさらですね。

このお話は、「ゴルフ」や「身体」だけに留まらない、
深いテーマ。
人間のすべてにかかわっていますね。

大変勉強になりました。

ありがとうございます。
by Zacky (2012-04-11 08:45) 

まいな

Zackyさん、コメントありがとうございます。

Zackyさんのおっしゃるように、ここで紹介したゴルフの話は些細な例に過ぎません。

「考え判断する表面の自分」を離れて、もっと「奥の自分」に身を委ねる、人生全般にわたり、どこまでそういう生き方を貫きとおせるか、不安もありますが私自身はそういう方向へ人生の方針転換の最中です。
by まいな (2012-04-11 22:43) 

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