「耳をひらいて心まで」 [書棚の中の1冊]
20数年前に神田の書店で不思議なタイトルにひかれて手にとってみたことを覚えています。今は絶版になり、中古でしか入手できないようです。
分離唱というのは音楽教師だった著者が音楽の集団授業の方法を模索する中でひらめいた方法です。著書の中では「ひらめいたのは神の助けだ」と書かれています。一言でいうとピアノやオルガンで和音を鳴らし、生徒はその中の一音を声に出すという練習です。もちろんその応用・バリエーションはあるにしても基本はそれだけです。
「たったそれだけですか」という声が聞こえてきそうですが、本の中ではその分離唱の練習を通じて美しいハーモニーを奏でる能力が育っていく様子、その能力が育った音楽家の演奏の素晴らしさが書かれています。「耳をひらく」とはその能力を身につけるという意味です。
私事ではありますが、本を読んだ後、いつか分離唱で鍛えられた人達の生の音を聴いてみたいと思っていました。その願いがかなったのは本当にこの2、3年です。インターネットのおかげです。
現在、佐々木氏のお弟子さんだった先生について、趣味の範囲ではありますがレッスンを受けています。そこには確かに求めていたものがありました。そのレッスンの様子については「体験記:音のレッスン」のカテゴリで紹介しています。よろしければご覧ください。
残念ながら佐々木氏の音楽教育は音楽界では異端視扱いされ、決してメジャーになることはなかったようです。事実、現在インターネットで「分離唱」というキーワードで検索してみても、得られる情報は限られています。
絶版ではありますが、合唱とかハーモニーとかを愛する方には機会があれば読んでいただきたい本です。
2012-01-04 06:00
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